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アイドルヲタクYouTuber・あくにゃんさんにインタビュー!動画制作の裏側から、アイドルだった過去、初の書籍、相棒「じぃや」のことまで全部聞いちゃいました!

アイドルヲタクYouTuber・あくにゃんさんにインタビュー!動画制作の裏側から、アイドルだった過去、初の書籍、相棒「じぃや」のことまで全部聞いちゃいました!

あくにゃんさんのヲタクライフについて

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男性ヲタクであることのメリット・デメリット

--- それではヲタク活動についてお聞きしたいと思います。男性ヲタクだからこそのメリット、逆にデメリットはありますか?

あくにゃん:メリットとしては、背が高いので落下物や銀テープが取りやすいとか、ファンサされやすいとか、サインボールとかも手渡ししてもらえるとか、そういうことがあったり。でも、スタンディングの時なんかは後ろの人の視界を遮ってるかも、って思っちゃうから居心地が悪いところもあります。デメリットとしてはリアコ(リアルに恋している)対応してもらえないところ。女の子よりも壁がちょっと見える。女性と比べて男性にかけてくれる言葉は圧倒的に少ないと思います。同じ金払ってんのにふざけんなとか思ってたし、うーん、一長一短かなって感じですかね。

--- やはりどうしても対応の差がでてきちゃうんですね。

あくにゃん:アイドルは女の子相手の方が得意だし、男性に対してはまず探りが入る。この子は「かわいい」って言われたいのか「かっこいい」って言われたいのかとか、女の子のように扱われたいのかどうなのかとか。だから、何回か通うと対応がよくなることもあります。

--- なるほど。正解がわからないなりに、少しでも嫌な気持ちにさせないよう考えられているんでしょうか。

あくにゃん:そういう子も居ましたね。僕が機嫌悪くしてると、客席降りのとき真っ先に飛んできてファンサしてくれたり、かまってくれたり。その子には以前、全然こっちの目を見ないからサイン会の時にすごい問い詰めたんですよ。「なんで?男だから見ないんですか?」って。そこから気を遣ってくれるようになりましたね。皆さんは真似しないで下さい(笑)

--- 男性も女性も同じファンとして扱いたいという気持ちが、アイドル側もあるんですね。

あくにゃん:うん。でも実際は扱いが難しいと感じていると思います。

ヲタライフ史上、最も心に残っている出来事

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--- ヲタ活をするなかで、最も心に残っている出来事はなんですか?

あくにゃん:やっぱり推しが初めて横浜アリーナに立った時は泣いちゃいました。あくまでもオープニングアクトなのでその子たちがメインではなかったんですけど、推しが横アリの大画面に映って、歌ってるということに感動した。でも、まだ暗転すらしてないから、ほとんどの人が推しに見向きもしてないんですよ。僕の友達はその時トイレ行ってたし。そのくらい誰も注目していない中、自分が好きな子が頑張ってるっていうアンバランスさにもぐっと来て。その公演は昼夜あって、最初は昼しか入らないつもりだったんですけど、夜も買い足して入りました。

--- 感極まってしまったんですね。自分が推しのためにした活動で、楽しかったことはありますか?

あくにゃん:韓国の音楽番組で、声援合戦したのは楽しかった。韓国の音楽番組って、有名なグループもそうじゃないグループも、観覧できるファンの数がある程度は平等なんですよ。計15グループくらいのそれぞれのファンが10人ずつ居て各ヲタクが勢ぞろいって感じなんですけど、みんな自分たちの推しが出番の時にめっちゃアピールするんです。周りは「誰?」って感じで、普通に携帯いじってる人もいるくらいなんですけど、熱い声援を送ることで他の観覧者に「私たちは知らないけど、人気なんだ!」って思わせたくて、めっちゃ頑張るんですよ。

--- 「あんなに頑張って応援してもらえるなんて、さぞかし人気なんだろう」って、別のグループのファンの人に思わせたいということなんですね。

あくにゃん:そうそう。僕は周りが価値を感じてないものに価値を感じている瞬間が好きなんです。売れていない時から応援するのは、いっしょに階段を一段ずつ上っていく感じがして楽しかったです。

「推しへの想い」と「恋心」の違いは?

--- 「推しへの想い」と「恋心」の違いってあったりしますか?

あくにゃん:「推し」と「恋人」では満たせる部分が違うと思っています。推しでは100%満たせないのに、推しで100%満たそうとすると人生破綻するので、この人は何を満たしてくれて、何を満たしてくれないのか、よくわかっていた方がいいと思います。

--- 似ているものではあるけど、同一視しすぎてしまうのは危険だと。

あくにゃん:本来別物なのに、それを別じゃないように見せるのが彼らの仕事でもあるので、倒錯するのは仕方ないと思うんですけど、全てを推しだけで満たそうとはしないほうが良いと思います。だから僕も、向こうがアイドルを演じているように、ヲタクを演じている部分があります。

--- 1歩引いたところで楽しまれているんですね。

あくにゃん:でも、僕1人だけいたんですよ。リアコ気味だった人が(笑)そっちの方が、ヲタクしてた時は楽しかった。その人は、恋人作って辞めちゃったんですけど。

--- その方との思い出を教えていただいてもいいですか?

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あくにゃん:他のアイドルは僕のことを営業で「かっこいい」とか「かわいい」って言うことが多かったんですけど、その人はいつも「綺麗だね」って言ってくれたんです。それでずくずくとハマって。ライブがあるたびに近くのホテル取って次の日仕事行って、また現場行ってホテル泊まって、なんてことをしてました。お金もめっちゃ使って。

--- ちょっとでもたくさん会いたかったんですね。その方が辞められたときは、とても悲しかったのでは?

あくにゃん:悲しかったんですけど、喪失感よりも怒りの方が大きかったかな?あと、ガチでリアコだったので、辞めたら会えるじゃん!という気持ちもありました。韓国でアクセサリー屋さんをやってるらしいし、選んでもらえるじゃん!みたいな(笑)だけど、やっぱりアイドルをしてるから価値があるんだなとも思いました。多くの人から愛されているわけではない人の視線を奪えたところで、なんもないみたいな(笑)

--- なるほど。

あくにゃん:いっつも思い出すのが、ギリシャ神話のイカロスの話。太陽を目指して近付いていくんだけど、最終的に羽が溶けちゃって墜落して死ぬ、みたいな。アイドルってまさにそれなんですよ。少しでも近づきたいからお金も時間も使うんですけど、実際近くなっちゃうと。

--- 死んじゃう?

あくにゃん:こんなもんだっけ?って感じ。友達になっちゃって、推しをやめたこともあるので。難しいですよね。

仕事とヲタ活、YouTuberの両立について

--- それでは次に、会社員としての一面についてもお聞きしたいと思います。今はどんなお仕事をされているんですか?

あくにゃん:広告関係の会社で、広報として頑張ってます。会社のことを広めるために。

--- お仕事は楽しいですか?

あくにゃん:うん。文章を書くのが好きなので、すごく楽しいなって思います。

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--- 職場の方は、あくにゃんさんがYouTuberをされているってことを知ってるんですか?

あくにゃん:知ってますよ。めちゃくちゃ見てくれてて、たまにテレビ会議の時にじぃやを映すと「あ、じぃやだ」って言ってくれたりとか。そもそも「YouTubeやれば?」って言ってくれたのがOJT(実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法)をしてくれた先輩だったんです。その時僕はやりたくない理由を色々述べたんですけど、それを全部打ち消してくれて、じゃあもうやるしかないよねってなって。

--- 温かい職場なんですね。週5でお仕事されながらYouTuberもされるって、すごく大変ではないのかなと思ったのですが、どうやって両立をされているんですか?

あくにゃん:寝る時間はそんなにないかな…。でも寝てるときは寝てるしな…。

じぃや:でも、毎日寝るの3時くらいだよね?

あくにゃん:うん。みんなが土日寝てたりとか、Netflix見るとかで使っている時間を、全部編集に充ててるって感じですかね。ぼーっとしてる時間は基本なくて、基本土日もフルで動いてます。

--- やはり努力家なのですね。それでは、お仕事のせいでヲタ活が出来なかったことはありますか?

あくにゃん:仕事のせいでヲタ活が潰れたらストレスになってしまうので、そういうことにはならないようにしています。僕はヲタクするために生きていて、その資金を稼ぐために働いてる部分もあるから。だから、面接の時点で休みたい時に休めるかどうかで会社を見ていました。今の会社も、1年目からがんがん有休取れると裏を取ってから入社したので。

じぃや:副業ができるってのがあったりね。

あくにゃん:うん。僕それ知らないで入ったんですけど。

じぃや:知らなかったんだ(笑)

書籍「推しがいなくなっても、僕はずっと現場(ここ)にいる-誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル-」について

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--- それでは、今年の3月に発売された初の書籍「推しがいなくなっても、僕はずっと現場(ここ)にいる-誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル-」についてお聞きしたいと思います。今回、自分がヲタクとして経験したことや感じたことを一冊に詰め込まれたと思うんですが、その作業は大変ではなかったですか?

あくにゃん:結構大変でしたね。特に冒頭にある「推し変歴」なんかは、まとめるのにトータル8時間くらいかかってるんですよ。たったの2ページなのに(笑)

--- 8時間も!

あくにゃん:話をもらってから2か月で初稿をあげないといけなかったんですけど、全然まとめられなかったです。全部本当の気持ちなんだけど、推しの界隈や人気度によって違ったり、韓国のアイドルに対してはこうだけど、ジャニーズに対しては真逆だったり、ジャニーズJr.に対してはまた違ったりと、結構ちぐはぐが多くて。これって自分の中でどういう一貫性があるんだろうと哲学的に考えさせられて、すごく勉強になりました。だから、文字化していないディスカッションがたくさんあるんですよ。

--- なるほど。それでは、この本を作る過程で自分の気持ちがはっきりしたところもあったのでしょうか?

あくにゃん:うん。でも、ちぐはぐな部分をそのまま出しているところもあります。やはり同じ矛盾を抱えてる人が多いので、そこに共感してもらえたりもしました。

読者に楽しんでもらうための、こだわりのポイント

--- より素敵な一冊にするために、こだわったポイントはありますか?

あくにゃん:章の始まりにはポエムがあるんですけど、どれもなんか哲学的と言うか、いい味出してるんですよね。あのファンうぜえ、同担うぜぇみたいな気持ちとは裏腹に、でも同担いないとヲタ活って完成しないよなーとか、結局現場で一緒に泣いて笑えるのもヲタクしかいないよなーとか、そういう気持ちを書いているんですけど、言い回しとかも結構こだわって。

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--- たしかに、とても詩的で、胸にぐっとくる内容ですよね。他にも「ここは絶対に読んで欲しい!」という箇所はありますか?

あくにゃん:個人的にはその「同担」の章が気に入っています。同担は目の上のたんこぶみたいな存在だけど、みんなから愛されていることで推しに価値を感じているから、いなくなっちゃうと盛り上がりに欠ける。他にもお金なくなっちゃってヲタク卒業したいけどできない気持ちとか、推しはどんどん卒業してるのになんで残ってんだよ自分はとか、そういう矛盾を楽しむ本かなとも思っています。

--- 自分だけではうまく説明できなかった気持ちを、再発見したり、肯定できるようになってるんですね。

あくにゃん:そうです。あとは、じぃやの謎がわかるっていう(笑)

--- そこは絶対知りたい方が多いと思います(笑)

じぃや:謎すぎて(笑)

過去に味わった嫌な経験も、本にとじこめて

--- 自分のリアルな経験を書くことに、抵抗はありませんでしたか?

あくにゃん:それはあんまりなくて。逆にヲタ活中嫌な思いした時は、絶対本にしてやると思って生きてました(笑)うざいこと言われても、絶対お金にしてやるからな、みたいな。むしろもう清々しい気持ちです(笑)僕、作家の中村うさぎさんが好きなんですけど、その方が「魂削って書かないと意味ない」っておっしゃってて。僕も同じ考えで、どうせやるからには踏み込んだこと書きたいし、言いたいし、魂削らないと価値がないと思いながら費やしました。

--- 中途半端に人の目を気にして、それなりのものを上げるんじゃなくて、本当に自分が伝えたいことを書かれたんですね。 

あくにゃん:「全く理解できなかった章もありました」という感想も頂くんですけど、振り幅を広くしてるので、そもそも全部の人が全章共感できますという作りにはなっていないんです。だから、自分とは違う考えを知って、新しい答えを見つけてほしい。実はこのコロナ禍で、迷いが生じているヲタクが多くて。このままヲタクを続けるかとか、自分って韓国アイドルの方が好きなのかとか、今の推しに不満がある人とかもいて、そういう人が一個向こう側に行く本になったのかなって思います。

次回作はフィクションに挑戦!?

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--- 「推し活をするなら、自分もハッピーでいてほしい」という思いで綴られたとのことですが、ハッピーにヲタ活をするコツってあったりしますか?

あくにゃん:とにかく人と比較しないこと。あと、ヲタクのヒエラルキーって大学休んでまで働いたりとか、何かを削らないと上に行けない構図になっちゃってるので、それよりも現状に満足すること。「ヲタクは辛いよ」という章でも書いているんですけど、なんかね、趣味なんだから辛いわけないんですよね、本来は。辛くなるくらい打ち込めてるって言い方もできるんですけど、それは楽しくした方がいいんじゃないかなって思いますね。

--- 誰かと比較せずに自分の中で楽しむ、というのが大事なんですね。ちなみに、また本を書いてみたいって思いますか?

あくにゃん:いったんは出し切ったんですよ。コロナの影響でエピソードも溜まってないから、すぐに続編は難しい。でも、物語とかはありなのかなと思っています。それをいつか推しで実写化してもらうのもいい夢だなって。で、「実話に基づくフィクションです」って書きたい。たぶんほぼ実話なんですけど…(笑)

--- 事実に基づいているから、とてもリアルで奥深い物語になりそうですね(笑)フィクション作品もとても楽しみです!


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